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心臓震盪(しんぞうしんとう)とは?
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戸田中央総合病院 救急部部長 輿水健治
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子供の突然死の原因として心臓震盪があります。これは胸部に衝撃が加わったことにより心臓が停止してしまう状態です。多くはスポーツ中に、健康な子供や若い人の胸部に比較的弱い衝撃が加わることにより起こります。脳震盪はよく耳にしますが、心臓震盪という言葉は聞き慣れないと思います。これから心臓震盪について説明しましょう。心臓震盪はラテン語のcommotio cordis(コモーショ コーディス)を日本語訳したもので、19世紀には教科書に登場しています。現在では「心臓に加えられた機械的刺激により誘発された突然死」として認識されています。1990年代にアメリカにおいて報告され、注目されるようになりました。日本ではまだあまり認識されていませんから、その予防や処置についても普及していません。 |
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心臓が停止するメカニズムは? |
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それは「Ball on T」による心室細動 心臓震盪の症例の中で心電図が記録できた症例をみますと、心室細動という不整脈が高率に観察されました。ご存知のように心室細動は心臓の筋肉が痙攣している状態で、血液を送り出すことができませんから、心停止ということになります。その後、ブタを使った実験で胸部にボールをぶつけてみると、あるタイミングでボールがぶつかった時に高率に心室細動が誘発されました(図1)。あるタイミングとは、心電図上のT波の頂上から15-30msec(ミリ秒)前のタイミングです。このタイミングは受攻期と呼ばれ、この時期に期外収縮が出現すると心室細動が誘発されるタイミングと同じで、期外収縮と同様に機械的衝撃でも心室細動が誘発されることになります。医学的には「R
on T」といって心室細動が誘発される危険な期外収縮の状態ですが、心臓震盪について言えば、私は「Ball on T」とでも呼びましょう。つまり心臓震盪は「Ball
on T」で誘発された心室細動ということになります。 |
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心臓震盪の診断基準は? |
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心臓震盪は肋骨や胸骨が折れるとか、心臓の筋肉が損傷されるなどの器質的障害によるものではなく、致死的不整脈という機能的障害です。従って、診断は偶然に心電図が記録できたとき以外には臨床的な経過から診断するしかありません。アメリカでの心臓震盪のデータを集積したときの診断基準を示します。 |
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どんなときに起こるの? |
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アメリカでの報告における128例の発生状況をみますと、競技スポーツ中に62%が起こっていまして、他はレクレーションスポーツや日常生活の中で発生しています。詳細は表1に示しますが、野球のボールが当たったものが最も多く、他にはソフトボールやアイスホッケーのパックなどが多くみられます。私が日本国内で知り得た症例では6例中の5例が野球のボールですが、3例が競技中の硬式ボールで、2例は遊びでのキャッチボールが当たったもので軟式ボールでした。胸にボールが当たりボールを拾うなどの動作が数秒間みられ、その後倒れ心停止に至ってしまうというのが典型例です。スポーツ以外では、子供同士の遊びのなかで肘や膝などが当たるとか、躾としての体罰などでも起こっています。ですから、何か特別な状況で起こるのではなく、ごく普通の生活の中で起こっていることに注意しなければなりません。 |
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どうして子供に多いの? |
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アメリカでの報告では約70%が18歳以下に起こっています(図2)。日本国内での症例でも小学生が3人、中学生が2人、高校生が1人です。子供は発育過程にあり胸郭がまだ軟らかいので、前胸部へ加わった衝撃が心臓へ伝わりやすいと考えられています。それまで元気に暮らしていた子供が、日常生活の中で突然死んでしまうのですから、とても悲しい出来事になってしまいます。 |
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起こしやすい衝撃部位は? |
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当たった場所が特定できた症例では多くが心臓の直上に一致しています(図3)。ブタの実験では、やはり心臓の直上にボールが当たった場合は高率に心室細動が誘発されています。その部位の周辺では発生率は極端に低下します。戸田中央総合病院で経験した症例でも衝撃部位は胸骨のすぐ左側で、心室のほぼ直上にあたる部分でした。 |
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防ぐことはできるの? |
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心臓震盪はそれまで元気で、何の病気もない子供に起こります。学校の健康診断(心電図検査やレントゲン検査もある)でも異常がなく、リスクファクターもない子供に起こります。また、特に危険度が高いわけではないスポーツや、遊びのなかでも起こります。ですから事前の健康診断などで発生の危険を予測することができません。しかし、起こりやすいスポーツや状況が判っていますから、注意することによって発生を減らすことは可能です。ブタの実験によれば、当たるボールは硬い方が心室細動を誘発しやすいという結果です。ですから、少なくとも小中学生では大人と同じ硬式野球ボールは使用しないほうが安全でしょう。また、かつての野球練習での指導のように「取り損なったボールは胸に当てて止めろ」などという指導は小中学生にはするべきではありません。前胸部を守る防具の使用も考慮すべきですが、野球ではまだ実用的なものがありません。アンダーシャツの左前胸部にパッドを入れるなどの工夫も良いかもしれません。スポーツや遊びのなかで頭部を危険から守るのと同じように、前胸部も守らなければという意識を持つことも大切でしょう。 |
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心臓震盪から命を救うためには? |
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AEDによる早期除細動が必要 心臓震盪は心室細動による心停止ですから、治療方法は電気ショックによる除細動が唯一の治療方法となります。一般的に心室細動が発生してから1分経過するごとに約10%ずつ除細動の成功率が低下してしまいます。つまり、10分経過するとほぼ助からないことになってしまいます。日本では119番通報してから救急車が現場に到着するのに約6分かかります。ですから、心臓震盪が発生してから救急車が到着するまでには、通報に要する時間などを考慮すると最短でも7-8分はかかると考えなければなりません。スポーツ施設は市街地から離れていることも多く、さらに時間を要します。したがって、心臓震盪から子供を救おうと思ったら、現場で除細動処置を実施しなければなりません。アメリカでは以前から一般市民による一次救命処置(BLS)にAED(自動体外式除細動器)を使用した除細動処置も含まれており、救命率向上に役だっています。実際、アメリカにおける心臓震盪の症例でも、除細動処置が実施されようになる以前は社会復帰例がなかったのですが、AED使用も含めて除細動処置が実施されるようになってからは15例が社会復帰しています。幸い日本でも2004年の7月から一般市民のAED使用が認められました。特別な講習を受けなくてもAEDさえあれば必要な救命処置が行えます。AEDの取り扱いは極めて簡単で安全に使用できます。是非、スポーツ施設、学校、公園など人が多く集まるところに設置していただき、安全に子供たちが遊び、スポーツに熱中できるようにしたいものです。 |
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まとめ
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突然死は成人にばかり起こるのではなく、元気だった子供にも起こるということを認識すべきです。特にスポーツ中の子供の突然死は以外に多く、その原因の多くは不整脈といわれており、心臓震盪も原因の1つです。こういった突然死から子供を救うためには現場での救命処置とAEDの設置が必要です。AEDによる除細動を含めた一次救命処置を行えるのは現場にいる人たちです。病院へ搬送していては間に合わない!現場でしか救うことができない命があるのです。 |
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